●名取の海岸林の機能と、ゾーンニング
肝心の記述を述べるのが遅くなりました。
名取の海岸林には、大きく2つの機能があると考えます。
1.防災機能: (防風、防砂、飛塩・高潮防備、津波減衰、防霧・ヤマセ防備)
2.景観保全保健文化機能:(余暇や憩い、散策・学習の場、生物多様性)
名取を含む宮城県南部、東日本大震災被災地の海岸林再生では、防災機能を保持した保全
整備を優先して考えることが望ましいと思います。とくにこれからは「地球温暖化」。
スーパー台風や高潮など何十年に一度の異常気象への防備を私自身は意識しています。
「名勝」のように、枝下の向こうに海が見える美しい林床に保つ必要はないと思います。
むろん、閖上や空港付近など、部分的には、お弁当を広げられるような、「親しみやすい
ゾーン」があってもいいかもしれません。
次に、ゾーンニングを行って、対象地ごとに保全の手法を区分する必要があります。
これまで海岸林の津波減衰効果や、飛塩・飛砂を分析した研究から、林帯幅200m以上が
適当とされています。プロジェクト再生植裁地の林帯幅は平均で約200mです。
飛塩や飛砂を「濾し取る」ようなイメージの機能です。
1.汀線(*ていせん)ゾーン *汀線:波打ち際
林野庁が示している林分構造の事例同様、海岸側から植裁50m程度のゾーンは、
防風、防砂、飛塩防止、高潮防備、津波減退効果を最も発揮させるエリアですから、
形状比(樹高÷胸高直径)・枝下高を低く維持していくのが重要だと思います。
そのためには、最新の研究に基づき、将来は、本数調整伐(海岸林では山で言う間伐を
このように言う。材木にする山の間伐と区別している)も、例外なく進めるべきと
考えます。このゾーンは松の純林となります。

右側より、太平洋、幅100mの砂浜、高さ7.2mの防潮堤、車道、もとの 地盤の砂浜、そして幅50m程の「汀線ゾーン」

右側より、太平洋、幅100mの砂浜、高さ7.2mの防潮堤、車道、もとの地盤の砂浜、そして幅50m程の「汀線ゾーン」


2.内陸ゾーン
汀線ゾーンの内陸側では、林分密度も中~低密度に調整し、樹高を高く、形状比を低く
管理する。将来の本数調整伐に伴い、枝下高が高くなった頃に、中・下層木としての
実生の広葉樹の自然侵入を促し、防災林としての機能を増す必要があります。
3.生物多様性配慮ゾーン
海岸林と農地との間、国有林地内に幅約30mの生物多様性配慮ゾーンがあります。
ここは湿地のような状況になっている場所もあり、オイスカと国との協定締結からは
外れている。トンボだけ見てもイトトンボなど種類が多く、部分的に実生で生えてきた
サクラ類が残っている。オイスカ協定地内ではこのゾーン設置の趣旨も考え、全長500m
以上の林縁部に1.8m間隔で2列のみ、ヤマサクラ類、ケヤキ、コナラ、クリを植栽。
先々も広葉樹侵入はかなり困難と考え、植栽木が母樹となって、配慮ゾーンとクロマツ
林床への種子の拡散を目論みました。(過去2年の広葉樹春植栽の活着率は30%程度と
極めて悪かったが、初年度の秋植栽は70%以上の活着、昨年の秋植栽も現時点では成功)
左側より、ビニールハウス団地、もとの地盤で幅30m程の「生物多様性配慮ゾーン」(国有地。植栽しません)、そして「内陸ゾーン」 

左側より、ビニールハウス団地、もとの地盤で幅30m程の「生物多様性配慮ゾーン」(国有地。植栽しません)そして「内陸ゾーン」


つづく

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