広葉樹生育確認

2017年10月2日( カテゴリー: 広葉樹, 現場レポート )

9月2日、ボランティアの日。
毎年社員有志を率いて来る東京海上仙台支店、自動車保険営業部S部長が、
「2年前に植えた広葉樹を見てみたい」と嬉しいリクエスト。
2mの樹高にまでなった様子を見て、
「過去あの作業が一番きつかったとみんな言うんだよね~」と。
昨年秋の補植は、乾風と寒風を乗り越えた今年6月の時点で、ほぼ100%が開葉。
やはり、この立地、この土では、「広葉樹は秋植えが相応しい」と改めて確認。
その後ひと夏発生する、ド派手な毛虫は、発見次第即駆除。
ほかに目立った病気はなく、一気に「根元が太く」なったのが今年の印象。
クロマツと同様、植えてから2年は、耐えに耐えねばならないのでしょう。
9月28日、地元の大槻さんと、広葉樹の生育確認調査を行いました。

大槻さんも私も溝に落ちそうになる

大槻さんも私も溝に落ちそうになる


①国有林
植栽総本数470本:生育本数444本(生育率94.5%)
・山砂
・海から波打ち際から420m、生物多様性保護ゾーン沿い
・樹種10種
多い順からヤマザクラ、コナラ、ケヤキ、ウワミズザクラ、大島桜、クリ(総本数の86%)
皇居産4種・65本のうち、エノキ50本。ほか15本はアカガシ、タブノキ、スダジイ
・樹高1mを超えた個体なし。全般的に根元径の太り見られず。コナラは樹勢ややあり。
・皇居産の常緑広葉樹は、2年半という長期育苗、根元径の太い苗に仕立てた甲斐あって、
生育率・樹勢「やや」良い。
「見えない・・・」と思いますが、大槻さんが指差ししてくれています。沿岸部の土壌に近い山砂、国有林にて

「見えない・・・」と思いますが、大槻さんが指差ししてくれています。沿岸部の土壌に近い山砂、国有林にて


②市有林
植栽総本数201本:生育本数190本(生育率94.5%)
・粘土質
・波打ち際から約400m、生物多様性保護ゾーン沿い
・樹種6種 ヤマザクラ、ウワミズザクラ、大島桜、コナラ、ケヤキ、クリ
・①に比べ樹勢良好。とくにサクラ類が際立ち、樹高2mを超えた個体あり。
水捌けが悪い粘土質土壌の林縁部(かなりマシな場所)、市有林にて。樹高2mクラスの個体が増えた

水捌けが悪い粘土質土壌の林縁部(かなりマシな場所)、市有林にて。樹高2mクラスの個体が増えた


公共工事以外の海岸林で「クロマツ広葉樹の同時混植」、
そして、その後の「疎林化」を見かけます。
クロマツは育っても、広葉樹は割箸のような太さ。樹高は植えたときのまま。
防風効果・飛塩防止効果が第1義の防災林の役割は、将来にわたって果たさず、
葛とクロマツの「これぞ疎林」か、ニセアカシアの拠点となるでしょう。
私たちは襟裳岬で、クロマツと広葉樹の複層林で防災効果を狙う「長期」施業を学びました。
クロマツ本数調整伐の後、広葉樹を「林間植栽」した試験地では結果は悪く、
自然に実生で生えてきた広葉樹を活かすほうが結果が良いと。コストはもちろん。
何度でも言いますが・・・
ここの飛塩・浜風、春の寒風と乾風、酸性かつ貧栄養土壌の厳しい環境では、
「人の手」で植栽しない限り、森林の回復、海岸防災林は形成できません。
広葉樹は、当面の間、森林化を期待できる密度の実生はありえないでしょう。
当プロジェクトで植えられた671本は、クロマツ林内と、背後地の生物多様性保護ゾーンへ
広葉樹種子を拡散させる「母樹」とイメージして、人の手で植えました。
「本数調整伐の後、自然に出てくる広葉樹を活かした複層林にしような」と
佐々木統括と話しています。
その時、二人は生きていなくても。
25年先には結果が出始めるでしょう。

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