海岸林繁茂種 ニセアカシアのお話―基礎編―

2017年6月10日( カテゴリー: 広葉樹, 清藤先生の視点 )

5月30日にニセアカシアの根を調べるためにプロジェクトサイトへ行って調査してきた。
海岸林の空き地にはニセアカシアが増えており、国の方で私たちの植栽地のところどころに
生物多様性観察ゾーンを設けているが、そこがニセアカシアの繁殖源になっているのも気になる。
ニセアカシアの枯殺については次回に報告するが、今回はニセアカシアについて基礎編をお伝えする。
image1「アカシアの雨にうたれて・・・・・♪♪」我々の年代の方々は良く覚えているでしょう。1960年代に大ヒットした西田佐知子によって歌われ、あの独特の歌う雰囲気が好きでファンであった方も多いはず。
一般にアカシアと言っているのは正確には「ニセアカシア(和名ハリエンジュ)」。
外来種で1873年(明治6年)にウイーン万国博覧会に出席した田中芳男に随行した津田仙が、この木の並木を見て種子を持ち帰ったという。津田仙は、有名な日本人初の女子留学生・津田梅子(津田塾大学の創設者)の父、最初は公園緑化樹として、その後荒廃地緑化に使われ始めた。また海岸防災林にも広く植えられ、どこにでもみられるほど繁殖旺盛な樹木である。
ニセアカシアは治山砂防緑化樹としてヤシャブシ、ハンノキ、アカマツなどと並んで用いられ、そのうちでも
萌芽力の強いニセアカシアが分布拡大し、単純なニセアカシア林と変わっていった。寿命は短く20~30年で
樹幹の傾斜、根返りを起こしその繰り返しの林分が多くみられます。
ニセアカシアはミツバチにとっての有用蜜弦植物としても有用とも言われています。
時期にはニセアカシアの花の匂いを感じる方も多いと思われる。ちなみにニセアカシアの花のてんぷらは
珍味である。ニセアカシアの材は金を払って置いていく木材と厄介者にされてきた。先日のニセアカシアの
調査に同行した方の話によると、炭に焼いて重宝して使ってきたそうだ。最近ではマキストーブの貴重な燃料
として、さらにフローリング材として開発販売しているとも聞いている。
ニセアカシアの生態について、繁殖方法は、
①種子から
②人為的伐採や自然攪乱による幹の損傷から萌芽
③地中に伸びる水平根から発生する根萌芽  の3通りの方法により拡大している。
意外にも河川、渓流域では根による萌芽拡大ではなく、種子による拡大が多い。
種子は埋土種子であれば20年以上経っても発芽するという。クロマツ林ではマツの樹冠の欠けた空間地に
ニセアカシアははびこっている。根でなのか種子でなのか興味が尽きない。
秋田県の夕日の松原での興味深い研究報告があるのでここで紹介したい。群落は100平方mに30本にも
萌芽が発生するといわれ、群落のサイズも数百平方mから11haにもおよび、それが作業道に沿って広がった
という。萌芽であれば根を掘って水平根を追っかければ同じクローンかわかるが、実際に根を掘って調べるのは
至難の業である。秋田県立大ではDNA解析技術を使ってクローン追跡している(浦野2006)。
それを図に示す。この結果、この群落は6クローンから形成されているのがわかる。
また10m以上離れていても同じクローンである個体が存在することである。
当初は土壌攪乱によりニセアカシアの種子の発芽が促進されて群落形成しはじめ、
水平根の発達によりクローン形成したことが読み取れる。
image2
ニセアカシアは潮風害を受けやすく、20年もすると垂下根が故損しはじめ倒伏しやすくなる。
決して海岸林に適した機能の樹種ではない。窒素固定する木なので土壌化・豊栄養化に役立つ。
しかし、菌根菌と共生するクロマツにとっては不要である。海岸林の将来をどう考えるかと
ニセアカシアの存在も関わっているように思われ、海岸林のゴールをどのように思い描くのか、
その点は行政ともコンセンサスを得えておくことが大切で、それによって保育作業も変わってくる。
我々にとっては、今は厄介者のニセアカシア、具体的にどう除去していくのか次回に報告したい。

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