つる切りをしないと

「山に入って木に巻きつくツルを見たら、誰の土地だろうとその場で伐るものだ」
オイスカ職員駆け出しのころ、農業専門の上司もそう言っていました。
林業会社在職時代は、武士が刀を差すのと同じで、従業員は鉈を腰に巻くのが当たり前。
歩いて通るだけの山でも、鉈で一振りで切断。瞬殺。水がボタボタ滴り落ちます。
伐採業務では、伐ろうとする木や周りの木に絡んでいないか、毎回、本能的に確認します。
ツル絡みの見落としは、重大災害の典型的パターン。
「いいか、吉田、よく見てろよ。ずっと離れて、木の後ろに隠れてろ」
親方が、わざわざ大声で呼んでまで、伐る前から伐る途中に至るまでの気付き方、
気付いた後の伐り方、逃げ方まで教えてくれました。
事前に見抜けないことももあるので。
伐った直後は、普通に倒れず、不規則な動きをします。
上でツルが絡んでますから、ブランコのように、木の太い根元が一旦向こうに離れ、
その後、加速度をつけて伐り手に向かってきます。
もし避け切れなかったら・・・
海岸林は斜面がないから、山より危なくないですけど。

ツルマメが、かわいく見えます 

ツルマメがかわいく見えます


「なぜツルはダメなんですか?」
本部海岸林女子3人はそれぞれ、現場できちんと聞いてきました。
木の上に上るだけ上って、その周りの木も含めて日照権を占拠し、
木々の生長権を奪い、森林の弱体化につながります。
かつて材木生産を目指して植えた森林でそうなってしまうと、
林業労働者がが「ボロ山」と呼ぶ、出荷など考えられない森林になります。
道を車で走っていて、遠くの木の上でフジが咲いているのは、
管理されていないという分かりやすい指標としてみるものです。
そういう山ばかりで働いた林業会社時代でした。
見るところ、この木すべてに1本以上のツルが絡んでいます

見える範囲にあるすべての木に1本以上のツルが絡んでいます


マツはとりわけ陽樹。
日照権を奪われることは、とくに若齢林では枯死のもとです。
ですから、植栽後5年程度の下刈(つる切りは当然含む)を終えた後は、
3年に1回程度、「つる切り・除伐」を全面的に行わねばなりません。
某県で、ツルだらけの80年齢の海岸林を見ました。
自衛隊基地の関連施設内にあり、森林行政が手を出せない状況にあるのか、
それはもう、ある意味見事なツルだらけ。隣の松林はちゃんとしているのに。
こういうボロ山は、風雪害にも弱いし、害虫にも弱く、大量発生源になります。
別の某県でも、まったく整備する気がない公有地が
松くい虫の発生源になり、延長何十キロの被害が始まりました。
たかがツルなどと、まったく思いません。
つる切り。巡視と森林浴も兼ねて、ボランティアでもできると思います。

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