現場を背負う人、繋ぐ人、担う人 ~JICA ECO-DRR研修にて~

2018年10月9日( カテゴリー: 海外との連携・発信, 現場レポート )

皆さん、こんにちは。
海外事業部のマスドメです。
JICAのECO-DRR(森林生態系などを活用した防災・減災)研修に合わせ、3年ぶりに名取の現場に足を運ばせてもらいました。
以前の訪問から、遥かにクロマツは広がり、また当時私も作業した溝切りの深さも幅も広がり、よりよい水はけの状態を保とうとしていることが見て取れました。現場に何かの目印として付けられたカラフルなテープ、植林地の上を悠々と飛ぶトンビ、植林地を支え、この数年の月日を見守ってきた防風柵など、その一つ一つに現場の歴史や人々の思いなど、多くのものが詰まっていて、自然に目に入ってきました。そして何より、当時は腰下ぐらいの背丈だったクロマツが、青々と茂り、さらに上に横にと頑張っている様子に自然と気持ちも込み上げました。

育苗が鍵となることは必ず説明します

育苗が鍵となることは必ず説明します


さて、今回現場訪問に至ったのは、この現場が3年連続の対象地となった「自然災害に対する森林の防災機能など生態系を活用した防災・減災(ECO-DRR)機能強化のための能力向上コース」という森林や環境、災害対策などに関わっている海外の政府関係者を対象とした研修が行われたためです。(以前の研修の様子⇒http://www.oisca.org/kaiganrin/blog/?p=19180
メンバーはタイ、ミャンマー、ベトナムといったアジアだけでなく、ヨーロッパ、中米など大陸も異なる7か国7名が研修に参加。
佐々木統括よりクロマツの種から植林するまでの一連の流れがテンポよく、明快に説明され、100%に近い発芽・活着率の高さに一行からは驚きの声が上がっていました。さらに植林されているマツが抵抗性という、より防災林として適した強い種が選ばれていることを知り、参加者の興味も質問もヒートアップ!それにもろともせずに、すらすらと答えていく統括。そんな中誰よりも頭がフル回転しているのは、統括や研修メンバー以上に、通訳を務めた2人。一人は、オイスカをボランティアとして支えてくださっている鈴木昭さん、そしてもう一人は本部のフィリピン人スタッフのグラゼンさんです。
鈴木昭さん フォーリンプレスセンター元職員。国際広報担当として震災直後から7年半関わっていただいています

鈴木昭さん フォーリンプレスセンター元職員。国際広報担当として震災直後から7年半関わっていただいています


グラゼンさん 海外事業部に在籍しながら同じく7年半、外資系企業や海外からの寄付金を担当

グラゼンさん 海外事業部に在籍しながら同じく7年半、
外資系企業や海外からの寄付金を担当


こちらの二人、幾度となく現場に足を運び、活動に関わる地元の皆さんやボランティアさんとも交流を深めると同時に、このプロジェクトに関しても理解を深めてきました。どんな良い通訳でも、現場での活動や背景を理解しなくては、相手に的確にこの「海岸林再生プロジェクト」の持ち味は伝えることはできません。そんな二人に佐々木統括や吉田部長も信頼を寄せ、短時間の中で軽快に研修は進みました。
時には、海外から現場に来られる方にはより細かい説明が必要、と気づいて、この現場の通訳としてベテランの二人がさっとこれまで持ちえた知識を加えて説明。英語で説明しているんですが、佐々木統括が「あー盛土の説明かー」と何だか通じている様子。
タイ王室林野庁の方。オイスカタイのことはとてもよくご存じでした

タイ王室林野庁の方。オイスカタイのことはとてもよくご存じでした


最後には、「とても印象的なプロジェクトだった。私の小さな国では1h程度の植林が一般的で100hという面積の大きさには大変驚いた。松も4年間ですでに2m近くの高さにあり、生長が非常に早く、強い。よい緩衝帯なる」(ボスニア)、「政府からの援助を受けることなく、民間企業からの支援や助成金によって、プロジェクトが自立していることに感銘を受け見習いたい」(イラク)、「この大規模なプロジェクトは、この地の海岸林の長い歴史と技術が伴って実施できている。自国ではマツを見ることはなく、ココナッツやマングローブのみが海岸には広がっている。これまでサイクロンなどが発生しても、住民は危機感を感じていないが、その恐ろしさや備えることの大切さを伝えたい」(エルサルバドル)という感想が参加者から出ました。
現場を背負う佐々木統括や吉田部長、そして今回日本の防災に関して学び、自国での防災を担う海外から研修に来た皆さん、しかしそこを繋ぐのは、現場を知り得た通訳の二人がいるからこそ。
多くの方々が支え繋ぐこのプロジェクト、日本だけでなく、今後海外の防災を担うのは、実はそこを「繋ぐ人」の存在もとても大きいものなのでした。

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