名取市内陸防風林 ~ECO-DRRの知恵を求めてNo.5~

2019年5月31日 ( カテゴリー: ECO-DRR, 本部スタッフのブログ )
震災前の名取の沿岸農地、県立農業高校。当時のクロマツ防風林は樹高約20m、風上側に樹高×5倍、風下側に20倍の防風・飛塩効果がある。「重塩害地域」が農地として成立するのに不可欠なインフラだった。

震災前の名取の沿岸農地、県立農業高校。当時のクロマツ防風林は樹高約20m、風上側に樹高×5倍、風下側に20倍の防風・飛塩効果がある。「重塩害地域」が農地として成立するのに不可欠なインフラだった。

海岸林担当の吉田です。

名取の「内陸防風林」の震災前の画像を、久々に目にしました。
被害を受けた共有林2ヵ所、3.64ha。
オイスカは海岸林約100haと一体で再生するよう要請を受けており、
すでに植栽は完了。
現在はひたすら草刈りを行っています。
畑の間にありますから、肥料が飛んできて、まぁ草丈の高いこと……
去年も年3回刈りを行いましたが、順調に育っているので、
下刈不要まであと数年といったところです。

フィリピン出張で、海岸林再生プロジェクトについて青空教室する機会があり、
海岸林の「防風」「飛砂・飛塩防止」などの仕組みを、図と写真を使って話すと、
夜も、地元の同僚たちが話題にして、口々に「知らなかった」と話していました。
私もです。東日本大震災以降、海岸防災林に関わってはじめて実地で学びました。
名取の防風技術は、世界のどこでも応用できると思っています。
例えば、海岸林ばかりに目がいきますが、内陸防風林も技術の極みです。

右上は仙台空港。「嫁に行くと苦労する」と言われるほど、厳しい地域だったそうです。防風林の理論を知り尽くした昔の人のプランに感服します。

右上は仙台空港。「嫁に行くと苦労する」と言われるほど、厳しい地域だったそうです。防風林の理論を知り尽くした昔の人のプランに感服します。

宮城南部・名取には要注意の風が3方向あると思っています。

①蔵王颪(ざおうおろし)11月~5月の西からの突風。二つのカンプウ(寒風・乾風)
②ヤマセ 宮城南部は5月に始まる。主に8月初旬、稲の花がつく頃の冷たい北東風。
③秋の台風 主に南東から。*3年前の竜巻も同方向から。

この風に対して、防風林として機能するギリギリの幅8mで
上の写真の通り列状に幾重にも並んでいます。
「共有林」として、昭和26年「防風保安林」に指定されており、
突風の吹く宮城南部沿岸の中で、なぜか名取にだけ存在するこの林。

まず、設計がすごい。8mという林帯幅、林と林の距離。
まさに風を治めているという印象。
地域住民を説得して、貴重な耕地の一部を共有林にした手腕にも感嘆させられます。


我々はマツノザイセンチュウ抵抗性アカマツを植栽。
将来は防風効果を高めるため、上記防風林もヒントに
ツバキなどを追加して、複層林にしたいと考えています。

 

全国に防風保安林は56,000haあります。
その中には、小さくても生活に不可欠な防風林が無数に含まれています。
山形には「日本三大悪風」の、「清川だし」という局地的突風から約200世帯を守る、
水害防備も兼ねた防風保安林2.4haがあることも知りました。

先日、東京西多摩では、自分の畑の良い土が飛んで行ってしまわないように、
また交差点を砂で埋めないよう、低木のツツジや狭山茶の木で、
止めているのも知りました。
防風理論の応用だなあと感心しました。

技術を駆使すれば、森は広く、大きくなくても役に立つ。
近い将来、海外現場で多くの人と共有してみたい。


*ECO-DRRとは「(森林など)生態系を活用した防災・減災」