ふたつのカンプウ

2014年5月27日( カテゴリー: 現場レポート )

広報室の林です。
5月24日、植樹祭に参加してきました。
とてもいいお天気で事故もなく無事に終えられたこと、
本当にうれしく思っています。
これまでいつも現場では強風を体験していたので、
当日の穏やかな天気にはただただ感謝! でした。
今日は、少しさかのぼって5月の16・17日に
ボランティア活動に参加の皆さんと一緒に
現場で 実感したカンプウについてご報告します。
過去、ブログにも出てきましたが現場はふたつのカンプウとの闘いです。
「寒風」と「乾風」。しかも「強風」。
両日とも「強風注意報」と「乾燥注意報」が出ていました。
防潮堤の上から植栽現場を見学している時のこと。
ある男性ボランティアさんが「いたたた・・・痛い! 痛い!」と。
短パンをはいていたその方、砂が飛んできて痛いというのです。
以前、仙台の国有林での植栽地を見学した際、
「飛砂で苗がやすりで削られたようになった」との話を聞きました。
成人男性が痛がるほどの砂が、あんなに小さなクロマツに
四六時中吹き付けているのかと思うと、かわいそうに思えてきました。
DSC_0064その風のすごさを何とか写真に収めたいと思いながら、どんな写真を撮っても腕のなさを嘆くものばかり。
これは少しだけ分かってもらえるでしょうか。育苗場のネットが強風で大きく湾曲し、しかもそこにたくさんのゴミがピタッとはりついています。
プロジェクト担当の吉田によると、虫が風にあらがえず、このネットにはりついているのを鳥が食べに来るのだそう。
現場で活動をした翌日は、どんなに気を付けていても顔が乾燥してガサガサになってしまいます。
土壌の水分も相当持っていかれてしまうのだろうなぁと。
植樹祭の日、カンプウは吹きませんでしたが、いつも通り顔はガサガサに。これからの季節は地温の上昇でも乾燥することでしょう。
小さなクロマツたちが、カンプウにも乾燥にも負けずに
すくすくと育ってくれることをただ祈るばかりです。

緑化技術担当の参事を務める清藤です。
4月30日付のブログの中で
「・・・盛土の土は採取した場所によってさまざま。
大きな石がごろごろしていたり粘土質だったり砂地だったり……。
硬いところは植えるのに手間がかかりますが、柔らかいところは作業がはかどります。
“1m毎に硬さが違う”“粘土はきつい”(作業員さんの声)・・・」と植栽地の土壌の状態を伝えました。
少し詳しくその土壌を解説します。
盛土は凝灰岩質といわれています。
礫、粘土、砂ということから恐らく新生代水成岩地帯、
一般に標高500m以下の丘陵山地を造った土だと推測できます。
「礫」は土層の深さ1m以下から掘られた基岩の部分です。
「砂」はその上層の60~100cm部分の柔らかく砕けた基岩鉱物砂の集合体です。
「粘土」はさらに上の40~60cmの気候に支配されてできた層です。
クロマツのようなマツ類の生理的特性をみると、根の張り方は細根では表層部にかたより、
支持根となる太根は深いところまで達します。
土壌の水分・養分の要求量は、スギ、ヒノキに比べ低く、
土の中の酸素要求量(好気性)は、スギ、ヒノキに比べて高いです。
こう考えると土壌からみたクロマツの適応地は「土の空隙」が鍵になるでしょう。
そのためには土壌の物理性を把握する必要があります。
「土壌」は「土壌の粒子」と、小さな粒子が集まったその「すきま」からできています。
土壌の粒子は砂・粘土などの無機物と腐植からできているので専門用語では「固相」と呼びます。
すきまは「空気」と「水」から出来ていて、それぞれ「気相」、「液相」とよばれており
これらの総称として「土の三相」と呼んでいます。
ではその三相はこの盛土ではどの様になっているか、
その分析の結果を次に図示しました。

よく発達したスギ林などの柔らかな土壌では、
固相、液相、気相の割合は、30,40,30%程度になります。
アカマツでは50,20,30%程度といわれております。
今回の結果は63、10、27%でした。
固相が多くなっており最適とはいえません。
固相に粘土が多いと空隙も少なく、根の再生と働きが悪くなることから植栽木の成長を遅らすことになります。
空隙は土壌の気相で知ることができます。
気相の割合は十分ではないものの予想していたよりも高いことがわかりました。
固相の多い部分、気相の不足部分は、植栽時に耕して植えることにより改善することも可能です。
現在、植林に当たっている方々は、活着するようにと丁寧に植えている状況をみると、土壌改善にもつながっているでしょう。

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