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背景

日本の沿岸の津々浦々には、いずれも人の手で植えられてきた海岸林が存在します。
しかし、我々の生活を黙々と守っている海岸林の存在意義や、その機能はあまり知られていません。海岸林の多くは森林法に規定される「保安林」として指定され、飛砂・飛塩防止、防風、高潮防備、防霧、生物多様性保全、「白砂青松」としての景観・観光地など、多くの機能を持っており、その地に生活する人々にとって海岸林はまさに生活インフラといえます。

名取市を含む宮城県南部沿岸域は、400年前の伊達政宗公の治世の時代に農地開墾されるのに合わせ、遠州(現 静岡県浜松市)から苗を取り寄せ、海岸林を造成しました。400年に渡り先祖代々守り続けてきた海岸林の後背地には一大農産地が控え、小松菜やチンゲンサイ、米などを生産してきました。

しかし、東日本大震災での津波により、海岸林が大きな被害を受けました。
被災面積は、被災した6県全体で3,659.2haにのぼり、宮城県がその半分以上を占める1,753.3haと突出し、そのうち750.4haが、木が根こそぎ倒されるなどの壊滅的打撃を受けました(林野庁調べ)。

オイスカは東日本大震災発生以前からプロジェクトの現場である宮城県名取市にご縁があったわけではありません。
50年以上にわたるアジア・大洋州諸国における農業の技術指導・持続可能な地域開発協力、30年以上の緑化活動を実践したオイスカの経験と実績から、震災復興のためにできることを考えた結果が「海岸林の再生」でした。
海岸林再生をめざすにあたり、“地元住民の強い意志がある現場でない限り、成功しない”というオイスカの海外現場での経験から、震災直後から地元の方々の声を集め、ニーズを探った結果、宮城県名取市で海岸林再生のプロジェクトを立ち上げることになりました。

生活インフラである防風、防砂、防潮、防霧などの機能を発揮する海岸林の再生は、災害からの市民生活はもとより、農業の復興にも不可欠であり、地元の農業従事者の「必ずおらたづの海岸林を取り戻す!」という強い想いが当プロジェクト発足の根底にあります。

地図

【写真】(クリックすると拡大表示されます)

写真塩分濃度の濃い風はクロマツによって遮られる(宮城県石巻市)

写真クロマツは地域の飛砂の防備に役立っている(静岡県磐田市)

写真クロマツ林に守られてる水田(宮城県東松島市)

写真砂原だった地が、昭和24年からクロマツを植え、今では「白砂青松百選」に選ばれ人々の生活をうるおしている(千葉県館山市)

写真津波により壊滅的な被害を受けた宮城県岩沼市(2011.4.21撮影)

写真震災前の宮城県名取市の海岸林

写真植栽予定地の地図

目的

1.
国・自治体の復興計画に沿い、行政と民間の連携・協働を推進し、東日本大震災からの発展的・創造的復興の一端を担うこと
2.
事業の実践を通じ、自助自立精神を将来にもたらすこと
3.
「なぜ全国の津々浦々に海岸林が存在してきたのか」の理解を促進すること
目標
  • 東京オリンピックが開催される2020年までに、約50万本の育苗・植栽を行います
  • 100haの育林を2033年まで行います
  • 2033年までに育苗・植栽・育林の過程で約11,000人の雇用を生み出します

プロジェクト全体図

オイスカがプロジェクトに関わる全体をコーディネートし、大きな協働の輪をつくりました。結果、被災農家の雇用を生み、育苗から植栽、育林までを一貫して行うことが可能になりました。

【図】(クリックすると拡大表示されます)

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名取市海岸林再生の会

ボランティア

ボランティア

名取市海岸林再生の会

震災前は隣接する地区に住み、同じ小学校、中学校出身で、それぞれ農家として小松菜やチンゲン菜などを栽培し、お互い気心の知れた間柄の方々。この農家仲間から、震災直後にも関わらず、海岸林を「必ず再生させる」という強い想いを受け、「海岸林再生プロジェクト」が立ち上がりました。長年の農家経験を活かし、なおかつ被災された方々の生活支援のために雇用を創出するというプロジェクトの基本的な考え方の下、被災した農家仲間を中心とした組織「名取市海岸林再生の会」が2012年2月29日に発足しました。

  • メンバー: 30人
  • 役割: 主に育苗を担当

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インタビュー

鈴木 英二氏
(スズキ エイジ)

「海岸林は私らの地元のシンボルで、無くてはならないもの。復興に頑張る姿を通して、今回の災害を後世に忘れずに伝えていきたい」

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インタビュー

森 清氏
(モリ キヨシ)

「海から吹きつける強風“ヤマセ”は本当に強烈で、農業に大打撃だ。塩風や砂を防ぐ海岸林は絶対に必要だね」

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インタビュー

高梨 仁氏
(タカナシ ヒトシ)

「私らも幼い頃から海岸に苗木を植えたり、林の中でキノコを採ったりしたんだ。子や孫の代までに海岸林をよみがえらせたい」

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インタビュー

桜井 重夫氏
(サクライ シゲオ)

「津波の映像を見ると今でも涙が出そうになる。でも前を向いていくしかないよ。まずはクロマツの苗木づくりから始めたい」

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インタビュー

武田 昭夫氏
(タケダ アキオ)

「松林をタネから育てるというような、ご先祖がやってこられたことをまさか自分でやるとは思わなかったですよ。
まだまだ元気ですから、75歳ぐらいまではやるかな(笑)」

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インタビュー

森 幸一氏
(モリ コウイチ)

「マツの苗を育てるのは、特に夏の草取りが大変。でも、みんなで作業するとおしゃべりが弾んで楽しい」

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インタビュー

大友 淑子氏
(オオトモ シュクコ)

「生まれて初めてマツの種を見て驚きました。その種からマツを育てることは感動的です」

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インタビュー

大友 祐一郎氏
(オオトモ ユウイチロウ)

「「再生の会」から「マツ林を守る会」のような管理をする団体が早く組織されて、若い人たちが後継者となっていってくれたら、一層展望が開けると思うんだけれどね」

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佐々木 廣一氏
(ササキ コウイチ)

「まず、太くて良い苗を育てることが造林の成否につながります。我々、海岸林再生請負人として、必ず見事に復活させてみせます」

全体の支出概要

プロジェクト全体で、合計10億円の資金が必要です。

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総額10億円まであと
557,421,989円(2016年5月末現在)

プロジェクト総額10億円

    • 現在の寄附金合計
      442,578,011円

    • 2016年度
      6,306,857円

    • 2015年度
      95,529,419円

    • 2014年度
      100,263,158円

    • 2013年度
      102,009,486円

    • 2012年度
      85,569,654円

  • 2011年度
    52,900,437円

長期フロー

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なぜクロマツ?

宮城県の海岸防災林は、1600年代から、伊達政宗公の命によりクロマツの植栽が進められ、背後地の農地や住民の生活を守ってきました。先人達が永年にわたり、クロマツを植栽してきたことは、クロマツが防潮、飛塩・飛砂防止に優れ、海岸に植栽する樹種として一番適しており、クロマツ林が地域の海岸防災林を形作る上で最もふさわしい樹種であることを歴史的・文化的視点からも示しています。
では、なぜクロマツが海岸の厳しい環境に耐え得るのでしょう?クロマツには植物学的に次のような特長があります。

葉に注目

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葉が細い針のような形状のため、「適度に風を受け流す」作用による防風効果、海からの砂や塩分を「こし取る」作用により、
内地を飛砂・飛塩から守る効果がある

暴風や飛砂・飛塩に耐える(防風効果)

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細胞の中の液胞に塩分をためることができる

塩(潮)に強い(耐塩性)

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植物は植物ホルモン(アブシジン酸)を作用させ、気孔(水分蒸発口)を閉じ、葉からの水分蒸発を防いでいる
クロマツはアブシジン酸が他の植物より多いため水分量を保持できる

乾燥に強い(耐乾性)

葉に注目

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まっすぐな太い根が他の樹種よりも地中深く3~4m伸びて幹や枝、葉を支える。津波に対しても「減勢」効果等を発揮する
暴風に耐え、津波にも負けない(深根性)
ハツタケやショウロなどのきのこ(菌根菌)と共生することでクロマツの根が肥料分や水分を受け取ることができる
痩せた土でも育つ(耐貧栄養土壌性)

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酸性土壌で溶け出す有毒物資(アルミニウムイオン)を無毒化する有機酸成分が他の植物より多いため、pH4.0以下でも生育できる※一般の植物はpH4.0以下で枯死する

酸性の土でも育つ(耐酸性)

しかしながら、近年、松くい虫被害による松枯れが危惧されています。そのため、松くい虫被害を考慮して、抵抗性クロマツを中心に植栽を進めています。
また生物多様性の保全等もクローズアップされているため、林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」資料を元に、最前線の海側にはクロマツの単層林を形成し、その背後にクロマツと広葉樹の混交林が形成されるよう計画しています。
広葉樹は、時間的経過とともに土壌化(土壌が富栄養化した状態)が進むと自然に侵入し、定着していきますが、種子源となる母樹がなければ、多様な広葉樹の混交林にはなりません。そこで、私たちは、少数ながらも母樹となる広葉樹も植栽し、将来、クロマツの単層林の背後に広葉樹の混交が見られる、多様で健全な海岸林を目指しています。
(監修 公益財団法人オイスカ 緑化技術参事 清藤城宏(農学博士))

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