緑化技術担当参事の清藤です。
海岸林担当の鈴木さんがクロマツをよく観察してブログに投稿しているのには感心しました。
さて、どうしてクロマツが秋伸びたりするかの疑問に答えたいと思います。これまでの研究成果を交えて少し詳しく話しましょう。まず樹木の伸長生長のタイプは大きく3つに分けられます。

  • ①夏季に伸長生長を休止するもの(夏季生長休止型)、
  • ②伸長生長に適度な条件下で伸長と休止を断続的に繰り返すもの(周期生長型)
  • ③日長や温度などの要因が生長に制限的に作用するまで生長し続けるもの(連続生長型)です。

①型は単節型のアカマツ、クロマツなどマツ類や、広葉樹ではブナ、コナラ、クヌギ、クルミ、カエデ類などです。
②型ではテーダマツ、ラジアータマツ、カカオ、マンゴーなどの熱帯植物、ミカン、チヤもこのタイプです。
③型には多くの落葉樹・サクラの類、ハンノキ類、ニレ、シナノキ、ポプラなどがあります。

この①型でも③型でも頂芽(冬芽)が節間伸長してから8月以降に2度目の生長(二次伸長)が見られるものがあるのです。これは「土用芽」、と専門用語では呼ばれています。それが高い確率で発生しているのがアカマツ、クロマツです。夏季生長休止型のマツは、春季に開芽すると急速に主軸伸長し、伸長生長を継続して6月末頃までおこない、休止して次の頂芽を形成していきます。それがそのまま冬芽になる場合と, 秋伸びする土用芽となる場合があるのです。

縦切断した冬芽の模式図を示しました。その針葉の基になる葉原基束数が多くないと土用芽にはならないようです。クロマツの葉原基数を調べた例は見当たりませんが、アカマツでは40~50程度の形成が見られないと二次伸長する土用芽になりません。春から伸びた主軸は、前年の栄養分を使って展開したのに対し、秋伸びする土用芽は、主軸が今年になって稼いだ栄養分を使って展開するので、その稼ぎが多くなければなりません。 また、これもアカマツの例ですが、気温と日長が関係していて、温度は最低18℃以上、日長条件が14時間以上で土用芽となることが明らかになっています。クロマツの土用芽も、葉原基数、温度、日長そして栄養条件が複合して起きる生物季節現象とおもわれます。
清藤先生

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