海岸林繁茂種 ニセアカシアのお話―除去編―

2017年6月10日( カテゴリー: 広葉樹, 清藤先生の視点 )

前回、「今厄介者のニセアカシア、具体的にどう除去していくのか次回に報告したい」と締めくくった。
海岸林をクロマツ林として形成するためには、繁殖力の旺盛なニセアカシアを除去できるか否かは
大きな問題である。
ニセアカシアの繁殖方法は3種類あると書いた。
種子繁殖、切り株からの萌芽繁殖、そして根からの萌芽繁殖である。今年は生物多様性観察ゾーンに
はびこっているニセアカシアに、甘酸っぱい香りを放って開花が見られてきた。

若齢木の開花

若齢木の開花


ニセアカシアの実生は開花開始が約6年という報告がある。盛土をしていないこの場所に繁殖している
確かに年数的にも合う。花が咲くと種子を生産するので、種子繁殖にも拍車をかけることになる。
植栽地のニセアカシアの繁殖は、切り株萌芽と地下茎・水平根からの根萌芽が主であると考えている。
ニセアカシアの繁茂地では、盛土した法面にまで這い上がり、法面からさらにクロマツ植栽面にまで侵入してくる
ほどの勢いにある(我々の植栽地ではない)。ニセアカシアの地下部は、大体20cm前後に地下茎・水平根が生存し、
根萌芽で個体が再生することから、地上部の刈りこみだけでは絶やすことは難しい。
下刈り・除伐しただけの区

下刈り・除伐しただけの区


下刈り除伐しただけの株からの萌芽木

下刈り除伐しただけの株からの萌芽木


左上の写真は7月にニセアカシアを下刈り・伐採しただけの区であるが、
右上のように切り株から萌芽枝が出てきている。
我々のプロジェクトでは、なんとかニセアカシアの侵入を抑えようと下刈だけでなく薬剤による除去の試験を
開始した。これは松島森林総合の佐々木勝義さんが昨年の下刈時に除草剤試験を開始し、10月に調査、続いて
この5月30日にその最終効果調査を行うというので立ち会あった。
萌芽根を絶滅するには根の枯死まで至らせる除草剤でなければならない。しかも土壌汚染を引き起こさない
薬剤ということになる。今現在農薬法で認められた有用な薬剤は、グリホサート剤である。
グリホサート剤とは浸透移行性の除草剤。すなわち薬用成分が植物体内をとおって地下部まで薬剤が
到達し、地下茎に移行した後に効果が表れる薬剤である。土壌に触れると不活性化されるため
環境へのリスクが少ないのが特徴。
試験に用いた3種のグリホース剤

試験に用いた3種のグリホース剤


その代表がラウンドアップ(成分:グリホサートイソプロピルアミン塩)、ハヤワザ(成分:グリホサートイソプロピルアミン塩34%+MCAイソプロピルアミン塩6.5%)、そしてグリホエース(グリホサートイソプロピルアミン塩41%)の三種類。
秋の調査の時点で、新しいニセアカシアの萌芽が見られた区もありそれが処理した株とつながっている
か否か、その点が気になっていた。今回の調査の結果、これらの薬剤を切り株に塗布した個体は、地下茎・
水平根まで完全に枯死しており、グリホサート剤の威力を見せつけられた(一部グリホエースに成果あり)。
しかし切り口処理時点には見られなかったが、処理区内で秋に萌芽が一部に見られており、それが処理と関係が
あるのかを調べるため何本か根を掘って追跡した。結果は処理木の根とは関係がみられず、異なる地下茎からの
萌芽であった。すなわち処理した7月中旬の処理時期には見られなかったが、10月の調査の時点で新たに萌芽が
みられたものがほとんどであった。地下茎は10~20㎝程度の深さで走っているが、萌芽がみられるのは
10㎝以上の浅い深さ。恐らく夏以降に急激に細根が浅い所で養分を吸い上げ蓄えて肥大し、萌芽芽を形成して
秋口以降、場合によっては翌春に萌芽するに至ると考えられることが出来る。
新しく発生した萌芽木

新しく発生した萌芽木


グリホサート剤の薬効は明らかになった。ここでは触れなかったが、各除草剤の処理方法についても
明らかにしている。今回は小さな試験区での処理であったので、周りから侵入していてきた根が伸びて
根萌芽をしているので、事業的にはかなり広範囲の処理が必要である。
ニセアカシアの除伐作業に参加した際には、是非その繁殖を観察しながら作業していただきたい。
海岸林に対する愛着が増し加わるでしょうから。

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